メトロポリタン美術館で毎年行われるファッション展とは?
ニューヨークのアッパーイーストサイドにある、観光名所としてもとても有名なメトロポリタン美術館。
そんな世界最大級の美術館では、毎年5月の第1月曜日に、『Met Gala(メットガラ)』と呼ばれるファッション祭典が催されています。
メットガラは、1948年に設立されたコスチューム・インスティチュートの資金調達のために設立されました。
当初は、ガラでの夕食のチケットが50ドルで売られ、参加者はニューヨークの上流階級層や、ファッション業界の人たちがメインだったそうです。
1972年にはアメリカ版『Vogue』の元編集長である、ダイアナ・ヴリーランドがファッション・インスティチュートのコンサルタントを務めました。そのことから、デザイナーやセレブリティーたちを集めて開催される形になっていったそうです。
そして何より、『Met Gala』がここまで大規模になったのは、同じくアメリカ版『Vogue』編集長のアナ・ウィンターが1999年に理事長を務めてからのこと。よりセレブを中心にしたイベントとなり、毎年とても華やかな舞台で、セレブリティたちがテーマに沿ったファッションを身にまとい、レッドカーペットを歩く光景がとても印象的です。
こちらは、2015年にメトロポリタン美術館で開催されたMet Galaです。この年のテーマは『China:Through the Looking Glass(鏡越しに見る中国)」。中国人デザイナー、グオ・ペイのゴージャスなドレスを身に纏ったリアーナがとても話題となっていました。
この『Met Gala』について、ガラが開催されるまでのドキュメンタリーを見てみたい方は、『The First Monday in May(メットガラ ドレスをまとった美術館』(2006)という映画がおすすめです。
画像出典:https://www.imdb.com/title/tt5519566/mediaviewer/rm3860797696
『Camp(キャンプ)』の意味は?
2019年5月9日から9月8日にわたって行われたファッション展は、『Camp:Notes on Fashion』というテーマでした。
このファッション界において、『Camp(キャンプ)』ってどういう意味?と、当時は疑問に思った方も多いはずです。
「”キャンプ”の特徴を挙げるのは簡単だ。人工的で誇張され、芝居がかっていて大げさな、皮肉の効いたものだ。そして”キャンプ”は軽薄で陳腐なものとして見下されること多いが、全くそうではないと思う。その背景には真剣さが潜んでいるし、見る者を笑顔にする効果もある。そうした部分にも着目してほしい。」-WWD JAPANホームページより-
これは”Camp(キャンプ)についての本を出版しているFabio Cleto(ファビオ・クレート)によるもの。
ファビオは上記のとおりに”キャンプ”の特徴を述べていますが、明確な定義がされていないため、テーマ発表後、2019年のメットガラでは、セレブリティたちがどのようなファッションを身に纏ってくるのか、とても期待されていました。
2019 メットガラ セレブリティたちのファッション
2019年5月6日の夜、メトロポリタン美術館にて『Camp:Notes on Fashion』がテーマとされたメットガラが開催されました。
この年のホストは、GUCCIのクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ、そしてレディー・ガガ、ハリースタイルズ、テニス選手のセリーナ・ウィリアムズ。
そしてセレブリティたちが披露した『Camp:Notes on Fashion』です。
まず話題になったのはBRANDON MAXWELL(ブランドン・マックスウェル)のピンクのドレスを着ていたレディー・ガガ。
とても存在感のあるドレスを見事に着こなし、なんとそこからマトリョーシカのように4変化を披露し、会場中の視線を集めました。
歌手のケイティ・ペリーは、MOSCHINO(モスキーノ)のドレスにシャンデリアを着て登場。アフターパーティーでは同じくMOSCHINOのハンバーガーの形のドレスを着ており、話題となっていました。
メトロポリタン美術館の2019ファッション展 フォトギャラリー
METガラ開催後の5月9日から、メトロポリタン美術館にて展示が始まりました。
ギャラリーでは、17世紀から現代までの約175点のウェアが展示されていたそうです。
昨年、私がメトロポリタン美術館に訪れた際に見たギャラリーの写真を載せていきます。
会場へ入ると、そこからは主に17~19世紀にかけてのコレクションが展示されていました。
そしてさらに奥へ進んでいくと、カラフルなボックスに『キャンプ』なコレクションがずらり。
上のほうにもさまざまな作品があります。
2020年のファッション展はどうなる?
2020年 ファッション展のテーマは?
2020年のファッション展のテーマは、『Time:Fashion and Duration(時間について:ファッションと持続時間)』。
このテーマは、イギリスの小説家であるヴァージニア・ウルフと、『時間と自由』という論文を書いた、20世紀のフランスの哲学者、アンリ・ベルクソンからインスパイアを得ているそうです。
メトロポリタン美術館は1870年の開館から今年の2020年で150周年を迎えるということで、今回の展示では、それに合わせて過去150年間のウィメンズファッションのタイムラインを振り返ることができる、というものです。
コスチューム・インスティチュートのキュレーターである、アンドリュー・ボルトンは、 The New York Timesにて、「ファッションは時間と切っても切れない関係にあり、その時代の精神を反映し、表現するだけではなく、時代とともに変化し、発展していくものです」と述べています。
2020年 のMETガラは中止?
毎年5月の第1月曜日に開催されるMETガラですが、COVID-19の影響で、今年3月16日に開催が無期限延期になりました。
今年のホストはLouis Vuittonのアーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエール、女優のエマ・ストーンと俳優のリン=マニュエル・ミランダ、さらにはメリル・ストリープもMETガラに初登場、そして共同ホストを務めるということでとても話題になっていましたが、なんと5月19日に、メトロポリタン美術館よりMETガラが中止になったことが発表されました。
メトロポリタン美術館でのファッション展はどうなる?
メトロポリタン美術館の公式サイトによると、ファッション展は延期となっておりましたが、2020年10月29日〜展示予定となっています。期間は2021年2月7日までと公表されています。
今後の状況次第では変更になる可能性もありますが、ファッション展の開催までとても待ち遠しいですね!
おまけ
アメリカ版『VOGUE』5月号では、17ページに渡り、2020年ファッション展『Time:Fashion and Duration(時間について:ファッションと持続時間)』の特集がされています。
メトロポリタン美術館が開館した1870年からこの2020年までの150年の間で、ファッションはどのように変化したのか、さらに変わらないことは何か、そしてファッションはどこに向かっているのか、という内容になっています。
コスチューム・インスティチュートのキュレーターであるアンドリュー・ボルトン、そして今年のMetガラのホストを務める予定だったLouis Vuittonのアーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールも登場しています。
特集ページでは、『Time:Fashion and Duration』のテーマに沿ったコレクションが掲載されており、ファッション展の内容を少しだけ先取りして見てみたい、という方にオススメです。
また、アンドリュー・ボルトンと他3名著による本も出ています。
*どちらも英語表記になります。
さいごに
2020年はMETガラが開催中止になってしまいとても大変残念ですが、『Time:Fashion and Duration(時間について:ファッションと持続時間)』のファッション展は10月29日より開催されるということで、とても楽しみです。
このメトロポリタン美術館のファッション展は、毎年テーマが変わり、ファッション展の雰囲気もガラリと変わります。
気になる方は、昨年の『Camp:Notes on Fashion』やその年以前の展示、そしてMETガラや展示ギャラリー準備の舞台の裏側を知っておくと、実際にファッション展へ赴いた時の感動が何倍にもなります。
今年のファッション展の開催まで待ち遠しいですが、ぜひ過去の展示やGALAの様子なども見てみましょう☆