ニューヨークの観光名所でもあるメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of art)では、毎年テーマに沿ったファッション展が開催されることでも有名です。主催はメトロポリタン美術館のファッションインスティチュートと、雑誌VOUGUE USの編集長、アナ・ウィンターがメインとなり、伝統的なイベントを大きなものにしました。
例年では、5月の第一月曜日に、「Met Gala(メットガラ)」と呼ばれるファッション祭典が行われます。その年ごとにテーマがあり、有名なセレブリティたちがテーマに沿ったそれぞれの衣装を身に纏ってレッドカーペットを歩きます。
その後、メトロポリタン美術館では、ファションインスティチュートによって展示されたファッション展が期間限定で一般公開され、年々世界中の多くの人たちがその展示を訪れています。
2020年のメットガラとファッション展はどうなった?
毎年5月の第1月曜日に開催されるメットガラですが、COVID-19の影響で、2020年5月19日に開催が中止になったことが発表されました。
2020年メットガラのホストはLouis Vuitton(ルイ・ヴィトン)のアーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエール、女優のエマ・ストーンと俳優のリン=マニュエル・ミランダ、さらにはメリル・ストリープもメットガラに初登場、そして共同ホストを務めるということで話題になっていただけに、中止が発表され、とても残念でした。
2020年は、COVID-19の影響で、メトロポリタン美術館が一時閉館されていましたが、同年の8月29日に再オープンしました。
メットガラの開催は中止になりましたが、メトロポリタン美術館で行われるファッション展は、通常より遅れてからの開催となりました。期間は2020年10月29日〜2021年2月7日まで。オンラインでの事前予約制となっており、時間制の入場と温度チェックがあり、定員には限りがありました。
2020年のテーマは『Time:Fashion and Duration』
2020年ファッション展のテーマは『Time:Fashion and Duration(時間について:ファッションと持続時間)』。
このテーマは、イギリスの小説家であるヴァージニア・ウルフと、『時間と自由』という論文を書いた、20世紀のフランスの哲学者、アンリ・ベルクソンからインスパイアを得ているそうです。
メトロポリタン美術館は1870年の開館から今年の2020年で150周年を迎えるということで、今回の展示では、それに合わせて過去150年間のウィメンズファッションのタイムラインを振り返ることができる、というものです。
コスチューム・インスティチュートのキュレーターである、アンドリュー・ボルトンは、 The New York Timesにて、「ファッションは時間と切っても切れない関係にあり、その時代の精神を反映し、表現するだけではなく、時代とともに変化し、発展していくものです」と述べています。
実際にファッション展へ行ってきました!
テーマは『Time:Fashion and Duration(時間について:ファッションと持続性)』。過去150年間のファッションの軌跡をたどるということがテーマです。
メトロポリタン美術館の展示エリアへ行くと、白と黒を基調にした入り口が見えます。

ギャラリーは時計をイメージした円形になっており、中心には時計の振り子が揺れています。バックサウンドは時計の振り子に合わせるかのように「カチ、カチ」と音が鳴っており、女優のニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、メリル・ストリープ(Meryl Streep)、そしてジュリアン・ムーア(Julianne Moore)がヴァージニア・ウルフの1928年の小説『オーランド(Orlando)』を抜粋して読み上げる音声も流れていました。
そして洋服は時計の円盤に沿うように展示がされています。
メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティチュートは60のペアになるセクションを用意していました。
1セクションの左側はファッションの直線的(一次的)な性質を表しており、右側の作品はそれに反復する形、素材、パターン、モチーフなどを通じて、ファッションにおける時間の循環性を現しています。そしてそれらのシルエットの変化を際立たせるという理由で、今回の展示ではほぼ全ての作品が黒で統一されていました。
次の展示ルームでは、時空空間をイメージしたような、鏡張りの空間となっていました。
そしてこの『Time:Fashion and Duration』のフィナーレを飾っていたのは、VIKTOR & ROLFの2020年春のオートクチュールコレクションからアップサイクル*の生地をパッチワークして展示された白いドレスでした。
現代では次々と新しいファッションが生まれてくる中で、それにともなって環境にも有害な影響が出ていることが問題視されています。近年、ファッション業界では、現代のファッションのあり方を再評価し、価値や品質、持続性を重視した「スローファッション」へと移行をしているそうです。
VICTOR & ROLFの2016年のオートクチュールコレクションでは、過去のコレクションから余った生地を使用して製作されています。2020年春夏コレクションのこの白いドレスは、産業革命以前の時代を想起させるシンプルなシルエットのパッチワークで創り出されたものです。
このハンドクラフトと共同作業を称えたパッチワークのドレスデザインは、ファッションの未来、コミュニティ、持続可能性の重要性を象徴していると解説されています。
*アップサイクル・・・”もともとの形状や特徴などを活かしつつ、古くなった不要だと思うものを捨てずに新しいアイデアを加えることで別のものに生まれ変わらせること”−一般社団法人 アップサイクル協会より−
2021年のファッション展はどうなる?
COVID-19の影響で、2020年は期間をずらしての展示会開催となり、つい先日に『Time:Fashion and Duration』の展示が終了しました。
例年であれば、5月の第一月曜日にファッション祭典「MET GALA(メットガラ)」が開催されるのですが、2021年はどうなるのでしょうか?
VOGUE US公式サイトによると、2021年のテーマはまだ発表されていないようですが、「MET GALA 2021はメトロポリタン美術館の資金調達を目的としたイベントで、このイベントには、スター若手のクリエイター、業界の著名人が参加しています」と述べられています。
まだ2021年のテーマと、MET GALA2021開催の詳細は発表されていないようなので、これから要チェックです!